【雑記】猫と僕。
これは、ある事件の後実録。
あの一件から、あの猫の瞳が、毎朝僕を起こしにくる。
黒々とした瞳。今にも話しかけてきそうな、瞳。
元々自由気ままな、そして生まれは野良猫のはずだから、
僕がいなくたって、餌を貰う場所は確保しているのだろうけれど。
そう信頼できるくらいには、もうその猫のことを知っている。
例の家を見ながら、ぼうっとしていると、
「あなた、この家の人の知り合い?」
後ろから夢想に、激突された。ちょっと吹き飛ばされた気がした。
「困るのよ猫が。毎日毎日鳴いて。わたしは眠りが浅くてね、毎日本当にうるさいの、それにあれから掃除だってしてないわけでしょう、汚いったらありゃしない。だれかやってくれないならってね、保健所に届けようかと思ってるのよ。本当に困るのよ。臭いもあるし、生き物だし、どこにいるかはわからないし、あなた、知り合いなら、どうにかしてちょうだい、困るのよ。」
そう言って、気が済んだのか、黙ってしまった。
気がつくと僕は、頷いていて、激突してきた張本人を見送りながら、
あまりにも突然に、解決策が差し出されたことに驚いて。
むしろそれに気づかなかった自分に、驚いて。
幸いなことに、彼女はもう、いないから。
そういうわけで毎朝、僕は現実の瞳に、今日も起こされる。